毎年、あわただしい4月当初を乗り切ると、管理職から「○○までに、学級経営案の提出をお願いします」とお声がかかります。
学級担任なら
このような先生方の想いを解決するためにまとめました。
この記事では、学級経営案のねらい、書き方、活用の仕方等の基本的な考え方が理解ができる内容になっています。
私は公立学校の元校長です。退職後、これまでの経験と知識を活かして、先生方と親御さんが応援する記事をまとめ「ワダチブログ」を運営しています。生徒指導上の実践的手法と考え方を解説した関連記事が多数あります。学級づくりの参考にしていただけたら幸いです。
この記事で、学級経営案の書き方と活かし方の基礎の基礎がわかります。きっとお役にたてると思います。
学級経営案小中学校の書き方と実例!学級経営案の「ねらい」は?
はじめに、学級経営案とは何かについて解説します。
1.学級経営案とは
学級経営案は、学級担任が「一年間を通してどのように学級経営を行っていくか」を示す計画案のことです。
堅く表現するとこうなります。
学級担任の教師が、各学校が掲げる学校教育目標の実現を目指して「学級の中での教育を意図的・総合的に計画し、その効果的な組織と運営を図る計画」のこと
実際に実行可能な有意義な計画案をつくるには、生徒の実態などを十分理解していなければ作れません。
そこで、一般的には新年度の学校がスタートし、児童生徒が入学・進級してから実態を把握する2~3週間の時期を経た頃に、書き上げるものです。
2.学級経営のねらいとは?
学級とは、先生も子どもたちも自分で選んだ学級ではありません。
つまり、学級とは一人一人の児童生徒と学級担任が奇跡的に集まった「出会い」の場であるということ。
一人ひとり、みな違った良さがあり、個性がある仲間と出会い、これからの1年間、「ふれあい」「学び合い」が始まります。
学級内の「出会い、ふれあい、学び合い」を通して、子どもたち一人ひとりが成長していく場とすることが学級担任の仕事であり、学級経営のねらいとなります。
3.学級経営の内容
学級経営、平たく言えば「学級づくり」です。学級担任のその日その日の「思いつき」で行うものではありません。
学校の組織の一員と「学校教育目標」を念頭に置いて、自分らしい学級づくりを行いたいものです。
そのためには、学級担任の考え方をまとめ、児童生徒の思いや願いを加味して、意図的に計画的に行われるべきものです。その計画案に当たるものが学級経営案です。
学級経営の内容(教師に求められる仕事)を大別すると次のようになります。
- 毎日の授業「教科指導」「道徳、外国語活動、総合的な学習の時間、特別活動」などの指導に関すること
- 人間関係を整えたり「生徒指導全般」に関すること。様々な指導、進路指導・キャリア教育、人権教育、安全・健康教育等に関すること
- 学級目標の設定したり教室環境に関すること等
- 家庭との連携協力に関すること
- 成績処理や評価評定等の学級事務に関すること
毎日ただ歩いているだけ、いつの間にか「富士山山頂に行けた」なんてことはおこりません。しかし、「富士山山頂にたちたい!」と目指す目標がはっきりとしていれば、歩き方を工夫することでしょう。
「こんな学級にしたい」と願い、具体的に考えることが学級担任としていかに大切なことかわかります。その考え方の作戦図が学級経営案とお考えになってください。
学級経営案小中学校の書き方と実例! 学級経営案の中身とは?
実際の学級経営案の中身について解説します。
1.形式は各学校ごとに違う
実は学校ごとに形式はバラバラです。その理由を「経営」と「運営」という言葉で簡単に説明します。
- 学校経営の責任者は校長先生です。
- 学校運営の責任者は教頭先生です。
経営とは、学校をどの方向にもっていくか、進むべき道筋を決めること(創造的なお仕事)です。校長先生が国や県、市の教育委員会の方針や児童生徒、保護者、地域の願いや教職員の状況を踏まえて目指す理想の学校を示します。その責任者が校長先生。
運営とは、校長先生の示す理想の学校像の実現のために「示された作戦図」を、「成功させるにはどういうふうにみんなで協力して進んでいくのか」その先頭が教頭先生です。
だからその学校経営案の形式は「校長先生」が決めるのです。
お気づきですか?
学級運営案ではなく、学級経営案です。受け持つ学級の目指す理想像を掲げて、実際に運営も行うのが学級担任の先生方。大変ですよね。でも創造的なお仕事。だから魅力的なのです。
2.学級経営案の項目の例
実際の学級経営案を作成しよう
1 学校教育目標
学級担任は校長先生の方針の下に教育活動を進めていくわけです。ですから、学校の目指す学校像、目指す児童生徒像をしっかりと意識しましょう。
2 学年目標
同じことが学年組織にもあてはまります。学年主任のリーダーシップの下、方針を意識して協力して仕事を進めます。学校教育目標の具現化を目指して、各学年の発達段階に応じ、学年主任を中心に各学年で具体的な目標を設定します。
学校によっては、学校の重点目標や研修テーマ、県や国の方針等が記載されていることもあります。「学級担任がおもうがまま勝手に作成するものではない」ということです。
組織の一員として学校教育目標と学年目標を踏まえて学級経営案を作成します。
ここから先が、学級担任の教育観・指導観を表現していく部分になります。
3 学級目標 学級目標については、下記の記事で詳しく解説しています。
4 学級の実態
学級の児童生徒の実態をどうとらえているかが大切な視点です。ココがスタート地点。1年後の理想の姿にするために、学級経営案を作成するのです。学校生活のあらゆる場面で情報収集をし、指導に生かせるようにしましょう。
5 目指す児童生徒像(本年度の努力点:基本方針等)
学級の子供たちが、翌年3月の終わりにはどんな姿になっていてほしいか、めざす子供の姿を具体的にイメージしましょう。
6 学級の組織
係活動 当番活動(日直、清掃、給食など)学級活動、生活班活動、児童会・生徒会(委員会)活動などが当てはまる。
7 学習指導 (授業の受け方や家庭の自学学習等)
8 生徒指導
9 教室の経営
10 家庭:保護者との連携協力
次は、実際の作り方と活かし方の解説です。
学級経営案の書き方と実例!書くだけで終わりにしない本当の活かし方を校長が解説
私が学校経営方針で大切にしてきた事項を具体的にあげてみます。
3 学級目標 (案)楽しいクラスでみんなで成長
学級づくりの視点
「楽しい教室:楽しい学校生活」はすべての子どもの共通の願い。「楽しかったぁ~」を帰宅するわが子に親御さんはホッと安堵します。わが子の笑顔が学校や学級担任への信頼の条件でもあります。
しかし、楽しいだけでは学校の存在意義は薄れます。なぜなら、学校教育は子どもたち一人ひとりの個性を輝かせてこそ真の信頼を得られます。それは「成長」という言葉に置き換えられます。
○○ができるようになった。○○に気づけるようになった。○○と考えられるようになった。このよき変化が「成長」です。みんなで成長していけるクラスこそ楽しいクラスです。
4 学級の実態
5 本年度の努力点 学級経営の基本方針(案)
「規律ある学級、いじめのない学級、学び合える学級、自治の力」特に、言葉に焦点をあてて、言語環境を整えることは学級づくりの基盤となります。大切な視点としておススメです。
- 違いを認め合える 違いから学び合える
- 言葉を大切にする生き方
- 自分から
- 良い習慣づくり
7 学習指導(案)
(1)時間厳守を意識させる(チャイム着席、提出期限、教室移動など)
(2)自分からの意識で取り組ませる(姿勢、聞く構え、ノートの書き方)
(3)規範意識を徹底させる(身だしなみ、違反物など)
(4)学び方を指導 (自学自習を促す)
8 生徒指導 (案)
キーワードは「自立・自律:自分づくり 言葉を大切にする よき習慣づくり」
(1)「時を守り 場を清め 礼を正す」時間や規則を守らせ、規律ある生活
(2)仲間意識を高め、互いに高め合える人間関係づくり あいさつ 言語環境を整える
(3)違いをは変いではない人権感覚 いじめを許さず他者を思いやる優しい心
(4)個性を尊重しながら、集団生活の中で社会性を身に付ける
(5)身のまわりの出来事を他人事ですませない 自分づくり
(6)「朝の会、帰りの会」の充実 清掃活動、給食活動の充実 よき習慣づくり
9 教室の経営
(1)整理整頓(ロッカー)衛生面への配慮、換気
(2)温かな教室環境の整備を心掛けさせる 掲示物の充実(カバン、置き勉など)
10 家庭:保護者との連携協力
課題や怪我や人間関係等の出来事は適宜連絡をしていく。課題のみならず、成長や大きな変化や頑張りにも連携協力体制で相互理解を促進する。
学級経営案を書くだけで終わりにしない本当の活かし方とは?
学級担任の心構え = 想うは叶う!
学級経営で大切なこと1つ挙げるとするなら…
互いに認め合い学び合う学級文化の構築です。
文化という言葉は、その学級の「当たり前な考え方・習慣・姿勢・態度」のことです。互いに高め合える人間関係の構築には「言葉」整えることです。各自の成長につながる言語環境を整えます。
人の心を傷つける心ない言葉 乱暴な言葉、自分勝手な言葉を廃し、前向きな言葉、温かな関係を築ける言葉を広げていきましょう。
そのモデルは教師自身です。学級担任の言葉の影響力を自覚することです。いい意味でも悪い意味でも、先生方の想像以上に子どもは先生方の言葉を聞いています。
聞いていなくても、先生方の真の心を恐ろしい感性で感じ取ります。小さなお子さん程、未熟がゆえに直感で先生の言葉から、「自分への好意、自分の味方や安心できる存在なのか」感じ取ります。
是非、学級経営の柱に「言葉」の重要性を取り入れてみてください。
学級経営案小中学校の書き方と実例!書くだけで終わりにしない本当の活かし方 まとめ
今回の記事は「学級経営案小中学校の書き方と実例!書くだけで終わりにしない本当の活かし方」についてまとめてきました。
学級経営案を「書くこと」「提出すること」が目的になってしまっている先生方もいることでしょう。
こんな忙しい時期に、提出期限が示され…ついつい例年通りにちょっと付け足す程度でいいかな…こんな心情になることもあるかもしれません。
学級とは奇跡の出会いです。先生方も子どもたちも自分の力で選んだわけではありません。この奇跡の出会いを最高の出会いにするには、学級担任自身が目指すGoal像がはっきりさせておかなければなりません。
こんな力を身につけさせたい。こんな笑顔でしめくくりたい。色々な子どもたちの成長した姿を具体的に思い描いてください。
これからも先生を応援する関連記事、親御さんの応援記事も保護者対応に参考になると思います。「ワダチブログ」が少しでもお役に立てたら嬉しいです。