「教師は授業で勝負する」の言葉があるように、先生方の「授業力の向上」への意識は高いように思います。
しかし、日常の校務に追われ「じっくりと教材研究をする時間に苦慮する現実」に悩まれている先生方は多いのではないでしょうか?
この記事では、
- 授業に悩みを抱えている先生方
- 授業の上手な先生に憧れさらに「授業力を向上させたい」と願う先生方
- 指導ネタとして学校をリードする先生方に向けて書きました。
ここでは
357名の中学生の声を集計した『授業中の教師の言葉かけや態度により、学習意欲が高まった経験』、生徒の声をまとめました。
授業がうまくいかない先生に向けて「目指す理想の先生像」「5つの基本姿勢」を提案します。「具体的に授業中に意識すること」がわかります。
「生徒への言葉かけ」について具体的言葉かけがわかります。
授業中に「子どもたちの笑顔が増える」近道がハッキリと理解できるようにまとめました。
私は、元中学校校長です。現在先生方を応援する「ワダチブログ」を運営中です。実際に先生方との聞き取りから効果を挙げた内容です。自分自身を振り返りながらお読みください。
授業が上手な先生の下手な先生の特徴!授業力向上のポイント解説
まずはじめに、自分自身の授業のふり返り方で、「意識してもらいたいこと」をあげます。授業力向上のカギは、「専門教科の学びの深さ」だけではありません。
授業中の二つの機能
教育学者の森隆夫氏は、
授業の中での教師の働きかけに「教科担任機能」と「人間担任機能」を提示しています。
毎時間の「ねらい:教科の達成目標」があるのですから、教科に精通していることが前提で、教材を適切に選定し指導過程を工夫するなどの中学校教師には専門性が欠かせません。
特定の専門教科の研究授業と言えば、その専門教科ごとの学びになりがちです。学び合う機会にも広がりにくいですよね。
つまり、森氏の言葉を使えば、教師には教科担任機能(S機能:Subject)と人間担任機能(H機能:Human-being)があり、従来から「S機能」が重視されてきました。
そこで
授業力向上のカギを「人間担任機能(H機能:Human-being)」に重きを置いていくことを提案します。理由は次の4点です。
- 人間を育てるH機能が必要条件であること。
- 両機能は補完関係にあり統一されるべきであること。
- 教科担任機能(S機能)と人間担任機能(H機能)とも高いHS型の教師が理想であること
- 授業力の向上へにむけた教師の思考転換だけで、効果が出やすいこと
授業のうまい先生の基本姿勢!やる気を引き出す~人間担任機能
人間担任機能って難しい言葉ですが、簡単に言えば先生の魅力です。
いつも笑顔で明るい先生。いけないことがあると「それはダメ!」と真剣に叱ってくれる。メリハリがある先生。そして「やれば、きっとできる!」と、励ましてくれる先生。
ハッキリりした話し方、聞き取りやすい声量、表情豊かで温かなまなざし‥‥こんな先生はみんな大好きです。大好きな先生の授業はやっぱり大好きなのです。(もちろん、教材の魅力や指導法が大切なのは言うまでもありませんが‥‥)
このような魅力ある先生像です。
人間担任機能が高い先生の授業の特徴は
- 「教師と生徒」と人間関係性(信頼関係)が高まる。
- 生徒相互の人間関係が良好なので、学び合う環境が整う。
- 生徒自身の「学習意欲」が高まる。
その一方で、人間担任機能が満たされないと「先生と子ども」との信頼関係が育まれません。結果、授業が停滞しつまらなくなるものです。
授業が下手な先生の特徴とは
授業が下手な先生の特徴は、非言語的なコミュニケーション能力がやや欠けていることです。具体的には、子ども側の受け取りはこんな感じです。
- 表情が暗い、笑わない、怒っているみたいな先生…
- 授業内容を先生が解説し、淡々と進めていている先生…
- 余談がない…余裕がない…生徒の言動への反応が鈍い…私語があっても一度注意はしてもそれ以上関わらない…関われない…したがって、褒めることも叱ることも減り、一人淡々と授業内容をこなしている。
人間担任機能が劣っている先生は、生徒のやる気を引き出すことや会話で交流ができないため、授業は淡々と先生の声だけで進んでいくような授業です。
教科担任機能面でも劣っていると、
- 教材の魅力がない。指導技術が未熟。
- 「わかりやすく教えたい」という実態に沿った工夫がない。
- 一斉授業のみで、指導法がワンパターン。
先生の理解度が劣っていると、話があちこち飛ぶことになりわかりずらい授業になります。子供たちに「理解できたよね…」という感じでどんどん進んでいく。全体的に自信が無いように教えていきます。
それでは、授業がうまい先生の特徴を解説していきます。
授業が上手な先生の5つの基本姿勢とは
私自身が作成した「45の質問」から183名の生徒の声を調査分析した結果です。生徒の意識調査データを主因子法で因子負荷量の高い「項目」から、目指す教師の基本姿勢を5つにまとめました。
授業上手の先生の基本姿勢1「尊重・承認」
生徒の意識が高い「項目」です。つまり、生徒の望む教師像です。
- 先生は、答えを間違っていても最後までしっかりと聞いてくれた
- 先生は、私たちのことをバカにするようなことがないので、気楽に質問できる
- 先生は、私たちの発言を「正しい、間違い」とすぐに成績に結びつけずに聞いてくれる
- 先生は、授業中間違っていても、頑張ったことを大切にしてくれる
- 先生は、授業中間違った発表しても、その時の恥ずかしい気持ちをやさしく受け止めてくれる
成績の良い悪い、発言の正誤にかかわらず、すべての生徒を差別や無視したりしない誠実な態度を望む生徒の声です。
今は幼く未熟な面もある生徒でも、自分と変わらず多くの可能性とかけがえのない存在として受け止めて接している「尊重」の教師像と、生徒の頑張りに気づきその過程を認めていく「承認」の大切さを生徒は求めています。
生徒の声「誤答を生かす姿勢」
生徒の声「努力の過程を認める姿勢」
思春期の中学生、反抗期の中学生は、大人になりたいけど、大人になり切れていない自分も自覚しています。色々未熟ですが「本当か、適当か真偽を見分ける感性はするどい」もの。先生が本当に「認めたい」と思うなら、言葉や態度、表情で表現してください。きっと伝わります。
授業上手の先生の基本姿勢2「正対・関与」
生徒の意識が高い「項目」です。生徒の望む教師像です。
- 態度の悪い時には、先生はしっかりと叱って、けじめのある授業をすすめてくれる
- 授業中の私たちの悪い一面は、真剣な表情で私たちに話しかけてくれる
- 授業中、他人に迷惑のかかる言動には、厳しく「〇〇することはいけない」と、きちんと注意してくれる
普段は「見守ってほしい」「信じて任せてほしい」と望みながらも、自分たちの「行動がいけない時」は、「悪いことは悪い」と厳しく注意してくれる先生を望んでいます。
「私たちに、真正面から向き合ってほしい」という願いをもっています。これを「正対」と表現しました。
いい時も悪い時も「関わってほしい」という願いを「関与」で表現しました。
生徒の声「行動前に勇気づける」
生徒の声「悪いことは悪い」
生徒の声「長所に目を向けてみていてくれた」
教師の「是々非々」の態度は必須です。
私たちから見れば35人の中の一人の生徒ですが、生徒側から見れば「私たちの先生」であり、「私の先生」でもあります。この感情を育めたら、人間関係、信頼関係の基盤が整っているかと思います。
授業上手の先生の基本姿勢3「自由・創造」
生徒の意識が高い「項目」です。生徒の望む教師像です。
- 先生は、実際に体験したことを話してくれ、授業を楽しい雰囲気にしてくれる
- 先生の授業は、わかりやすくよく理解できる
- 先生は、自分の中学校時代などの体験を話してくれ、私たちの気持ちを楽にしてくれる(リラックスできる)
- 先生は、私たちの興味を引くような工夫をしてくれる
- 先生は、いつも笑顔でクラスを明るい雰囲気にしてくれる
- 先生は、ゲーム的なやり方を取り入れるなどして、楽しい授業を工夫してくれる
ここでは、教師の適切な自己開示の姿勢を、生徒が求めている様子が伺えます。先生の素が感じられる人間味から親しみを感じ人間関係を高めることに繋がっていきます。
生徒と同じ目線で、真剣に、明るくメリハリをつけてくれる教師像を期待していることがわかります。
教師は、生徒に近すぎてはいけません。
教師への一定の距離感が欠かせないものの、生徒が教師を身近に感じたいものです。教師は深い専門性や確かな指導技術に「プラス」して先生方自身の魅力で授業を「楽しく」「興味深い内容」にしてほしいと願っているのです。そこで「自由」や「創造」の一面が欠かせない理想の教師像です。
生徒の声「自己開示する姿勢」
生徒の声「わかる授業」
教師は生徒のことを「あの生徒はやる気がある!、あの生徒はやる気がない」表現しますが、生徒の「やる気」を生徒自身の「資質:持ち物」のように考えない。
やる気は「関係性」という特徴もあります。人間担任機能を発揮して生徒の関係性を築けば、どの生徒もやる気ある生徒になります。
授業上手の先生の基本姿勢4「With・支援」
生徒の意識が高い「項目」です。生徒の望む教師像です。
- 私が困っている時やわからない時、先生は私の席まで来てくれて教えてくれる。
- 先生は、私の机の横にしゃがみこんで話しかけ教えてくれる。
- 先生は、私と一緒に考えて、課題を手伝ってくれる。
- 先生は、「わかった?、大丈夫か?」と気楽に声をかけてくれる。
- 課題ができずにいると、個人的にていねいに教えてくれる。
ここでは先生と一緒(With)に勉強したい、個人的に大切にされたいという願いを感じることができます。
他と比較ではなく生徒一人ひとりをしっかりと認め、生徒の思考過程に「そばに寄りそい:With」、「手を差し伸べてほしい:支援」を期待する生徒の心がわかります。
生徒の声「一緒に授業をつくる」
生徒の声「あたたかさ」
先生にとっては、無意識の何気ない“普通”の指導でも、生徒には様々な感性で受け止め、貴重なきっかけとなる事もあるんですね。だからこそ、先生方が「意図的」に人間担任機能面を意識して授業を行うと、生徒によき反応が出てくると思います。
授業上手の先生の基本姿勢5「共感・まなざし」
生徒の意識が高い「項目」です。生徒の望む教師像です。
- 先生は発表(答え)につまっても、先生はおだやかな表情で、せかせないで待ってくれる
- 先生は、じっくり考える時間を取ってくれる
- 先生は、黒板の字を書く時、私たちのペースでていねいに書いてくれる
ここでは「わからない時」「困った時の気持ちをわかってほしい」という願いを感じます。
教師のまなざし、表情、視線の交わし方、声の調子、姿勢や態度等の非言語的コミュニケーションの重要性を示しています。
本時の「学習内容をしっかりと終わらせたい」と教師は自分のペースで授業を進めてしまう傾向も時にはあります。十分に気を付けたい視点です。
生徒の立場に立ち、生徒の表情や反応をしっかりと理解し、授業を進めたいと考え「共感」と教師の「まなざし」の力を信じました。
生徒の声「生徒のペースで」
生徒にとっては、大勢の一人とだけでなく、「自分を大切に扱ってくれている」「僕を見ていてくれる」ことは勇気が出てくるものです。
授業が上手な先生の基本姿勢と下手な先生の特徴!授業力向上のポイント解説 まとめ
今回の記事は「授業が上手な先生の基本姿勢と下手な先生の特徴!授業力向上のポイント解説」についてまとめました。
専門教科の教材研究を中心にした研修は、授業力向上へ不可欠で重視しべき研修法です。しかし、教科の専門性を磨くだけでは、不十分です。
なぜなら、
私たち教師は、良好なコミュニケーションを築いたうえでの学力向上を考えるべきです。教師は、良質の人間関係をつくるプロなのですから。
専門教科を磨く意識にプラスして、人間力を高めるためにも「言葉づかい」を大切に「ていねいに言葉」を紡いで生徒にかかわってほしいと思います。
ここまで、お読みいただきありがとうございました。
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