学校の先生

生徒指導提要改定のポイント!校則見直しやいじめ・不登校・発達障害等への対応を解説

そもそも「生徒指導提要」って何ですか?

この質問に的確に答える先生は、かなり少数派ではないでしょうか。

教員なら「生徒指導提要」という冊子があることは知っていても、実際に読み込んでいる先生は少数派です。事実、学校現場では、「生徒指導提要には、このように記載されている」等の話題は、日常交わされません。

この記事では、日頃、教育実践に追われ「生徒指導提要」をじっくり読みこむ時間のない先生方に、要点4つの視点から簡潔にまとめた記事になっています。

  1. 生徒指導提要って、そもそも何? なぜ改定されたの?
  2. 子どもを取り巻く急激な環境変化例 時代を象徴する法令3選
  3. 学校は何を再検討すべきか
  4. 「いじめ問題、不登校、発達障害、性の多様性」への対応視点

この記事では、学校で行われている生徒指導の大きな枠組みを理解できます。広い視野を持ち将来を見通した生徒指導の王道を理解できる内容にしました。

私は公立学校の元校長です。退職後、これまでの経験を活かして先生方と親御さんを応援する教育関連のブログ「ワダチブログ」を運営しています。

日々心掛けることをスッキリと簡潔にまとめましたので、読み込んで損のない必要最低限の内容になっています。是非参考にしていただけたらありがたいです。

生徒指導提要って、そもそも何?

生徒指導提要がなかった時代:各学校が独自に生徒指導進めていた

子どもたちへの「生徒指導」は、全国の先生方の仕事の中心です。

実は、生徒指導提要ができるまでは、各学校の判断で生徒指導が行われていたのです。

学校現場で生徒指導の進め方を独自に判断していたわけです。指導のあり方などを取りまとめた教科書のようなものはなかったわけです。

生徒指導提要の初版2010年以降の時代、はじめてのガイドライン

生徒指導面で統一基準のない実態を踏まえて、文部科学省は2010年、有識者会議の議論を経て、生徒指導の意義やいじめ、喫煙・飲酒といった非行行為などに対する具体的な指導方法や、関連する法律や家庭・地域との関わり方などをまとめました。

それが「生徒指導提要」です。

つまり、生徒指導提要は、生徒指導のガイドラインです。文部科学省が作成した生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書と理解してください。

学習指導要領とは異なり、生徒指導提要には法的拘束力はありません。

しかし、文部科学省が「望ましい」と考える生徒指導のガイドラインです。

小学校段階から高等学校段階までの生徒指導の理論・考え方や、実際の指導方法等について、時代の変化に即して幅広く、詳細にまとめています。

各学校では自校の生徒指導体制の実態を見直し

「生徒指導提要」に従って生徒指導体制の再構築・充実が求められているのです。

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生徒指導提要の「改定」って何? その理由がわかる!

生徒指導提要の初版が2010年です。

その提要が改定版が2022年12月に出されました。生徒指導提要改定の理由は、子どもを取り巻く社会の急激な変化があげられます。

子どもを取り巻く社会の急激な変化

  • いじめの認知件数の増加
  • 児童虐待の相談対応件数の増加
  • 不登校児童生徒の増加
  • 若者の自殺者数の増加
  • SNSでのトラブル性被害
  • ヤングケアラーの課題

まだまだ、新たな課題が生まれてきている現状です。広い視野をもち、時代の急激な変化を理解していこうとする意識を持てたらいいですね。

ちなみに、生徒指導提要(改訂版)は、第I部と第II部で構成されています。

  • 第I部は、生徒指導の基本的な進め方として、生徒指導の定義・目的、生徒指導と教育課程の関係性、生徒指導を支える組織体制について解説
  • 第II部は、生徒指導上の各課題ごとに章立てて解説しています。

押さえておきたい時代を象徴する「3つの法律」

いじめ問題対応法令

特に、児童生徒の痛ましい自殺者を招いてしまったいじめ問題にでは「いじめ防止対策推進法:2015年」が制定、いじめの問題に対し、学校だけでなく社会全体で向き合い、適切に対処していくため基本的な理念や体制を定めた法律です。

不登校対抗法令

不登校に関しても通称「教育機会確保法:2016年」が制定されました。不登校の児童生徒に対する教育の機会の確保、夜間などに授業を行う学校における就学機会の提供などの施策に関して、基本理念や国・地方公共団体の責務などを規定した法律です。

発達障害;配慮を要する児童生徒対応法令

発達障害についても「障害者差別解消法:2016年」が制定・施行されました。この法律により、障害を理由とする不当な差別的な取り扱いはより明確に禁止され、障害者への合理的配慮の提供が求められることとなりました

こうした子どもの教育環境の大きな変化にふまえて、生徒指導の基本的な考え方や取り組みの方向性を再整理するために、このたびの改訂が行われました。

ココから、簡潔に概略を整理していきます。

生徒指導提要改定のポイント!校則やいじめ・不登校等指導の基本を解説

学校や教室に問題行動が多発すると、問題行動を正すことが生徒指導という意識を持つ教員が多いです。そこで、生徒指導の定義を押さえるところから始めてみます。

生徒指導の定義とは?

生徒指導とは「一人一人の児童・生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動」をいいます。問題対応=生徒指導ではないことを理解してください。

 生徒指導の本質は「一人一人に児童生徒の成長・発達を支える」ものです。

各学校においては、

一人一人の児童生徒の健全な成長を促し、

児童生徒自ら現在及び将来における自己実現を図っていくための自己指導能力の育成を目指すという生徒指導の積極的な意義を踏まえ、

学校の教育活動全体を通じ、その一層の充実を図っていくこと」

が生徒指導と理解してください。

いじめ・暴力行為・不登校をはじめとした、個別の課題に対する生徒指導についての記述が大幅に増加したこと

改訂された生徒指導提要のポイントは

いじめ対策

いじめを背景にした自殺者が出ており、学校で起こる「いじめ問題」に対する社会の目は一段と厳しくなっています。

改訂された指導提要では4段階での改善を求めました。

  1. 1段階目は、「いじめ防止基本方針」の具体的な展開に向けた見直しと共有
  2. 2段階目は、学校内外の連携を基盤に実効的に機能する学校いじめ対策組織の構築
  3. 3段階目は、事案発生後の対応的な生徒指導から脱却する
  • すべての子どもたちを対象に、
  • 子どもたちが自らを自発的に発達させていくことを支えるような生徒指導
  • 課題の未然防止と早期発見からなる課題予防的生徒指導への転換

最終的には

4段階目は、いじめを生まない環境づくりと、いじめをしない態度や能力を身につけるような働きかけを行うこと を重視していくとしています。

校則の「HP掲載ルール」と「校則見直しへの再検討」

東京都教育委員会は2022年度から、「髪の一律黒染め」や「下着の色指定」「ツーブロックの禁止」「自宅謹慎」「高校生らしいなどの曖昧な表現を用いた指導」などを、理不尽な校則や指導内容を意味する「ブラック校則」にあたるとして、都立高校では全廃すること等が報道されています。

こうした意識は社会全体に浸透しつつあり、改訂された生徒指導提要でも校則の運用・見直しについて言及されています。

改訂版では、校則の意義を認めています。

「学校教育において社会規範の遵守について適切な指導を行うことは重要であり、学校の教育目標に照らして定められる校則は、教育的意義を有するものと考えられる」と説明しています。

その一方で

「校則の制定に当たっては、少数派の意見も尊重しつつ、児童生徒個人の能力や自主性を伸ばすものとなるように配慮することも必要」としています。

校則の制定時に配慮が必要であることを明示しました。

校則の内容は、普段から学校内外の関係者が参照できるように「学校のホームページ等に公開しておくことが適切である」

との考えも示されました。制定から一定期間が経過した校則についても、

校則の意義が適切に説明できないような校則については 絶えず見直しを行うことが求められる」などとし、

各学校ではそのような方向性を視野に再検討が求められます。

発達障害への理解

改訂した生徒指導提要でも、発達障害のある児童生徒には合理的配慮が求められていることを明記しています。

学習上または、生活上の困難を改善・克服するための具体的に配慮が必要な事例として

「読み書きや計算、記憶などの学習面の特性による困難さ、不注意や多動性、衝動性など行動面の特性による困難さ、対人関係やコミュニケーションに関する特性による困難さ」を挙げられています。

学習内容については変更・調整をしたり、タブレットなどのICTを活用することなどが想定されています。

性の多様性:教職員の理解促進が求められている

生徒指導提要改定版第II部の第12章に「性に関する課題」に「性的マイノリティに関する課題と対応」という節が追加されました。

性的マイノリティの児童・生徒への無理解・偏見等をなくすよう教職員の理解促進の必要性が明記されました。

“性同一性障害”に関する児童について「個別の事案に応じ、児童生徒の心情等に配慮した対応を行うこと」が基本です。

LGBTや性的指向・性自認(SOGI)について解説です。

「性的マイノリティに関する理解と学校における対応」では、当事者が少数派であるがゆえに、社会の中で偏見の目にさらされるなどの差別(いじめ問題に関連する項目)を受けてきたことを理解しなければなりません。

性の多様性については、教職員への正しい理解の促進と相談体制を含む組織的な対応ができるようにしておくことがカギです。

  • いかなる理由でもいじめや差別を許さない適切な人権教育の一面でもあること
  • 性的マイノリティとされる児童生徒には、自身のそうした状態を隠したい感情を踏まえつつ、学校においては「相談しやすい環境整備」が大切であること
  • 当該児童生徒の存在が分かった時点で、支援は組織的に取り組むこと

生徒指導に苦しんでいる先生方にご紹介ください。

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生徒指導提要改定のポイント!校則見直しやいじめ・不登校・発達障害等への対応を解説 まとめ

今回の記事は「生徒指導提要改定のポイント!校則見直しやいじめ・不登校・発達障害等への対応を解説」についてまとめました。

私見ですが、学校の使命の第一は「子どもたちの命・人権を守ること」だと考えています。「親御さんから大切な命を預かっている意識を持ち続けて、その前提条件の下で豊かな教育を考えてきました。

すべての子どもたちに対して、学校・教室での生活が、安心して楽しく魅力ある居場所となるよう、先生方は知識面での勉強も欠かせません。予想ができないほどのスピードで変化し続けている社会。

性的マイノリティ等の性の多様性だけでなく、発達障害等、特別な配慮を要する子どもたちや複雑な家庭状況、さらに外国人等の多様な価値観をもつ児童・生徒などへの正しい理解と適切な対応が求められています。

教育実践に追われる毎日かと思いますが、落ち着いてしっかりと学び続ける姿勢が教師には大切に思います。

「ワダチブログ」では、教育関連記事が多数ありますので参考にしていただけたら、有り難いです。