通知表は、子どもも保護者も関心が大きいものです。親御さんは、成績はもちろん、担任の先生から見た「わが子のがんばりや成長」を、所見の中に感じたいものです。
一人一人の児童生徒の良さをしっかりと認めた所見で、子どもや親御さんの心をつかめば、元気づけることも信頼を勝ち取ることもできます。
そこで、この記事では(1)心に染みる所見の手順(2)通知表所見の文例(3)通知表の効果的な渡し方をご紹介します。
また、所見を書いているとピタッとペンが止まってしまうこともあるのではないでしょうか。
例えば、「内気な子、控えめな子」など、「どのように書いて表現したらいいか」悩んでしまうようなタイプのお子さんにも焦点を当ててみました。
文例をたくさん用意しました。例文をヒントにして、先生方の大切な児童生徒の良さや頑張りの再発見にお役に立てれば幸いです。
通知表の所見にこだわり、「さらにいい所見を書きたい」想いの先生方に向けた記事です。
私は公立中学校の元校長です。40年間の小中学校の経験から先生方と親御さんを応援する
先生方のお子さんへの熱い思いに応えお役に立てたら大変うれしいです。
所見書き方と例文を紹介!心に染み入る所見への手順
「限られた字数の所見」の中に、担任の想いや真意を伝えることは大変難しいものです。
しかし、ずっと一緒に生活して児童生徒理解を深めてきた先生方だからこそ、ピンポイントで心に迫る表現をしたいものです。ここで「こだわり所見」について、書き方の手法を紹介します。
1「通知表所見は学期末の事務作業」という意識は捨てる
一気に仕上げようとすると、大きな負担感が押し寄せます。情報収集は随時やっていきましょう。
こういうチャンスに、すぐ記録しておくことが大事です。
「運動会でいろいろな場面でみんなに声をかけて、盛り上げ役を頑張っていたな…」こんな思いを下記のような所見になりませんか。
○○さんの元気な声、明るい表情でクラスメイトにたくさん声かけてムードを盛り上げていました。
クラスのみんなからも支持され信頼されています。運動会MVP級の活躍でした。何事にも一生懸命、前向きな姿勢は○○さんの素敵な長所です。
長所やよさを感じた時点、がんばっているなと褒めたいとき認めてあげたい時点、その時点で記録しておくことです。
2 児童生徒の意識等、情報収集を直接生徒から聞き取る
計画的に所見を進めたいし、大切なのは分かっているけど、「忙しくてできないなあ」という先生方は、終業式3週間ぐらい前に、次のようなテーマで調査しておくことをおすすめします
- 「今学期、わたしが一番がんばったこと」
- 「今、自分の課題だと考えていること」
- 「今学期、こんな点は自分が成長できたと思うこと」
- 「こんな人になりたい、これから目指したい目標は?」
- 「今学期、特に“ありがと””を伝えたい人」
このような児童生徒自身が意識している実態を把握すれば、通知表の所見に活かすことができます。
児童生徒一人一人の特長を愛情ある生徒理解で、所見の表現が味のあるものに変化していきます。
通知表所見書き方の文例を紹介!書きづらい子の良さの表現する視点
所見を書いていると、ペンが止まり迷う時があります。「どのように表現したら、○○さんらしく表現できるかな?」と、うまく書けないケースも時にはあるものです。色々なタイプのお子さんに焦点を当てて文例をまとめてみました。
1:所見の内容(例文)内気な子、意見を主張することがなく控えめな感じ
2:所見の内容(例文)学習の取り組む態度
3:所見の内容(例文)元気いっぱいのムードメーカー
いつも元気いっぱいで、冗談を言ったりしてクラスの雰囲気を明るくしてくれる存在です。うまくいかなくても、失敗しても気持ちの切り替えが早く、行動力があります。いつも元気に前向きなので、友達からも慕われています。
頭の回転が速く、いろいろなことにチャレンジ精神で挑戦していくところが○○さんの個性でありよさです。○○の時も意欲的に取り組み大活躍でした。
明るい雰囲気でクラスを引っ張るリーダーシップがあります。責任感や行動力に優れ〇〇の行事の時も先頭に立って頑張りました。元気に指示もできるし優しい言葉かけもできて大活躍でした。仲間をいつも大事にして笑顔で会話している姿が印象的です。
4:所見の内容(例文)クラスの中の交友関係
仲間に入れずに困っている友だちがいると「一緒にやろう」友だちにやさしく声をかける姿がみられました。公平公正で誰とでも仲良く会話できる人柄は、クラス中から信頼されています。
友だちにうれしいことがあると自分のことのように一緒に喜んでいる姿が見られました。(一緒に涙する姿が見られました)友だちに寄り添い一緒に喜びや悲しみを感じられる心の豊かさが○○さんの良さです。
(○○さんの友だち想い)は、学級の誰もが認めるところです。○○さんの優れている一面です。
○○さんは、心から「ありがとう」と感謝の気持ちを素直に伝えることができます。交友関係も良好で楽しそうに生活しています。休み時間は○○さんの周りに笑顔が広がっています。明るく素直で友だち思いの○○さん、とても素晴らしい長所です。
自分の意見を最後まで押し通すだけでなく、相手の立場も理解しようとする態度に大きな成長を感じることができます。
自分の中で納得いかないことは、率直な気持ちを相手に伝えることができます。自分の考えをしっかり持って生活しています。誰にでも自己主張する芯の強さを感じます。
自分の感情を豊かに表現することができます。自分の考えを持ち、話し合いに参加できます。
4:所見の内容(例文)最近の生活で変化してきた一面
人が見ていても、見ていなくても変わりなく、○○の仕事を責任もってやり遂げました。○○さんが、大きく成長したところです。
プリントの配布係を責任感もって活動しています。よく気が付き“どうすればいいか”自分で正しく考えて行動できるようになってきたことが、大きな成長です。
○○当番さんが欠席の時など、率先して「僕、手伝います」と積極的に活動できます。「みんなのために」頑張れるところが大きく成長した一面です。
この表現○○さんに、ピッタリ!という場合、是非ご活用ください。または文例をヒントにして、あなたらしい愛情ある表現に挑戦してみてください。
通知表の所見を最大限に生かす「通知表」の渡し方
せっかく想いを込めて書き上げた通知表、一人一人の児童生徒に手渡したいものです。先生の言葉で、勇気づけたいものです。
先生の温かな想いを言葉にして届けるには、コツがあります。
生徒にとって影響力を及ぼす最大のポイントは「先生の話し方」「先生の表情、態度」「声の調子」です。
児童生徒に強い印象を与えるのは、
先生がどんな話し方をしたか!ここがよきコミュニケーションのコツになります。
1人に20秒カラ30秒でも、30人クラスなら15分はかかります。
ぜひ、「この子にはこれを伝えたい」という視点から、お話しください。
その際、目と目の合わせ、視線を交差することが大事です。
気の利いたことではなくてもいいのです。
笑顔でやさしくお話しください。一人一人を大切にしている気持ちを子どもたちに伝えましょう。話し方、生き生きとした表情、声の調子がカギです。
家に帰ってお母さんお父さんに、先生方「…を誉めてもらったよ」と、嬉しそうに話しているお子さんを想像してみましょう。
きっと、思いを込めた所見の効果が倍増するはずです。
所見の書き方と例文を紹介!小中学校の通知表 まとめ
今回の記事は「所見の書き方と例文を紹介!小中学校の通知表で書きづらい子の良さの表現する視点」をテーマにしてまとめました。
働き方改革のなか、所見を省略する学校もあるそうです。私は、本末転倒に思います。子どもを「先生方の表現する文字」でしっかりと勇気づけることができるのです。
温かな真実の言葉を届けたいものです。
私も「通知表の先生の言葉に救われました」そんな言葉を思い出します。
親御さんは、先生方から見たわが子の様子(見方)をも待っているはずです。プロとして届けたいものです。
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