学校の先生

ヤングケアラー問題の実態とは!教師ができることの支援・対応例を解説

以前から、子どもの世話等「親らしいことを全くしない母親や父親」は存在していました。最近になって「ヤングケアラー」の言葉をかなり広まり定着しつつあるようです。

この記事は、ヤングケアラーを正しく理解してもらい、教師ができる温かな支援策を講じてほしいと願いまとめたものです。

私は、公立中学校の元校長です。これまでの経験を活かして、学校の先生方や子育て中の親御さんを応援する「ワダチブログ」を運営しています。

この記事では、ヤングケアラー問題の最新調査結果から実態の把握ができます。ヤングケアラーの基本的な理解の仕方がわかります。教師ができる、具体的な支え方が理解できます。

ヤングケアラー問題の実態とは!教師ができることの支援例を解説

1.ヤングケアラーとは何か?

ヤングケアラーとは、

家族など身近な人に対して無償で、「介護・看護・日常生活のお世話や援助」をしている「18歳未満の子ども」のこと

をいいます。

ヤングケアラー問題の実態とは何か!

ヤングケアラー問題の本質的な実態はこれです。

「子どもが家族の誰かをケアしていることが問題」と表面上の理解で、わかったつもりは禁物です。

ヤングケアラー問題の本質的な実態は、こう表現します。

「本来、大切にケアされるべき存在である子どもが、全くケアされていないことが問題」なのです。

家族のケアや手伝いをすること自体は自然な行動ともいえます。しかし、その実態が過度な負担により学業等に支障が生じたり、子どもらしい生活が送れなかったりすることが課題となっています。

学校教育内では「ヤングケアラー = 悪」というメッセージとならないように配慮する必要があります。

「ヤングケアラーといわれる子どもたちの半数は、ほぼ毎日」何らかのケアや仕事をしており、1,2時間の子どももいれば、一日7時間(7.1%)という壮絶な実態を表す数字もあります。

ヤングケアラーの「子どもたちの声」は?

辛さをわかってほしい…

相談できる場所がほしい…  自由な時間を増やしてほしい

頑張って家族を世話していることを認めてほしい…褒めてほしい…

あまりにも、繰り返しの中で日常に溶け込んでいるため、子どもたちにとっては「当たり前の毎日」なのです。

スポンサーリンク

厚生労働省のヤングケアラーの実態把握(2022年)の最新状況

厚生労働省の実態把握(2022年)の最新の状況です。

2万4500人対象初の調査、9700人の回答結果です。

  • 小学校6年生…ヤングケアラーと思われる割合は「6.5%」おおよそ15人に1人
  • 中学生2年生…ヤングケアラーと思われる割合は「5.7%」おおよそ17人に1人
  • 公立高校2年生…ヤングケアラーと思われる割合は「4.1%」おおよそ24人に1人

調査結果から…普通学級内に「1人~2人」のヤングケアラーが存在している!

家族の対象は

兄弟…71%  母…19.8%  父…13.2%  祖母…10.3%  祖父…5.5%

仕事の内容

見守り…40% 食事…35.2% 兄弟の世話、送り迎え…28.5% 入浴・介護…18.9%

小学生・中学生ヤングケアラー問題の一般的な特徴

小学生ヤングケアラーの一般的な特徴

小学生の一般的な特徴の傾向を4つにまとめてみました。

  1. 一般的な家庭と「我が家の実態」の違いがわからない。 基本的な生活習慣が教えられてなく身についてもいない。そもそも、ヤングケアラーの生活が日常の普通の毎日なのです。言い換えれば、「大変な状況、困っていること自体がわからない」と言えそうです。
  2. 「毎日がきついなあ、大変だなあ、何だかしんどいなあ」と感じていたとしても、言葉で伝えることができない。
  3. 家族以外の人との繋がりが少なく、繋がろうともしない。外部との接触を警戒している親もいる。色々な制約を言い聞かされていることもある。
  4. 家庭内で学習する習慣がない。家庭のフォローは全くない。労働力としての位置づけを思いこませている。

中学生のヤングケアラーの一般的な特徴

中学生の一般的な特徴の傾向を5つにまとめてみました。

  1. 部活動に入れなかったり、途中で欠席が多くなり続けることができなくなり退部してしまうことになる。
  2. 放課後すぐ帰ったりするため友人との行動パターンが違うことで、 友人と話が合わなくなったり、疎遠になりやすい傾向がでてくる。
  3. 深夜労働等や介護等で、朝起きられず遅刻や欠席が多くなる。宿題ができなかったり、授業についていけなくなり学習面が遅れる。
  4. そもそも小学校から変わらぬ生活が続いているため、基礎学力が身についていない状態である。
  5. 小学生の頃と比べて、家事の内容はほぼ一人前の大人の働き手として扱われるようになる。

中学生にもなれば、「我が家の現状について」周りの家庭との違いに気がついてきます。友だちや先生にも「家庭の実情」については言ってはいけないと思っている傾向があります。

そもそも、いくら働いても、尽くしても、日常の生活の中に家族等から「感謝」の言葉がなく、当たり前の日常が過ぎ去っていきます。家族内に温かさ、温もりが感じられないケースもあります。その場合、以下のような傾向が強くなります。

  1. 自己肯定感が低くなってくる。
  2. 進学や夢について諦めている。
  3. 辛さをわかって欲しい気持ちが出てきてもうまく話せない。

ここまでで、おおよそのヤングケアラーの実態把握できたと思います。大事なポイントは、子どもが一人で抱え込まないように社会全体で支えていくことです。

ヤングケアラー問題!教師ができることの支援・対応例を解説

ヤングケアラーに「教師ができること」

教師は子どもと接する時間が長く、日々の変化に気付きやすいためヤングケアラーを発見しやすい立場にあります。

教師に出来ること1

教師の直感「ヤングケアラーかな?」を大切にして、早期発見を目指し、その後の適切な支援につなげることが重要

教師に出来ること2

情報収集・実態の調査・確認のため、子どもの気持ちに寄り添うことが重要

「寄り添う」この言葉を具体的にまとめます。

一つ目は、あなたに関心をもってますよ!という態度を示しながら、丁寧に子どもの話を聞くことです。ポイントは聞くことに徹することです。

「なるべく学校には休まず登校できるとイイね」「高校には進学したほうがイイよ」といったいわゆる「大人側の正解」を言わないことです。

なぜなら、全く会話のない親子で会ったり、親側からの一方的な話しかされていない状況が想定される中、教師の言葉もまた、同じに聞こえるはずです。

ですから、お子さんの話しを最後まで聞ききる姿勢が大事になります。

お子さんに必要なことは、学級担任が「身近な信頼される大人」になることです。信頼は、正解を言う大人ではなく、自分の話にきちんと耳を傾けてくれる大人ではないでしょうか。

「もうひとりじゃないよ!」

このメッセージをしっかりと届けたいものです。ココだけに専念することを目指してください。関係性が整い始めたら、次のステップに進みましょう。

二つ目は、何をしてほしくて、してほしくないのか、どのような支援が欲しいのか等についての丁寧な聞き取りをはじめてください。

その後、スクールソーシャルワーカー等を活用した教育相談体制の充実、市担当者、包括支援センター、児童相談所等とのケース会議等における関係者間での情報共有がはじまります。

実際には、家庭内のデリケートな問題であり、子ども本人が現状を問題視していない場合もあります。本人や家族にも全く現状への問題意識が薄く、改善への自覚がない場合もあります。また、家族の状況を知られたくないと接触を拒む場合もあるでしょう。

予想される課題も、一つ一つ当事者の立場に立って心に訴えかけていかねばなりません。しかし、初期の段階では説得ではなく聞ききることで信頼を勝ち取ることでしょう。

ヤングケアラー問題の実態とは!教師ができることの支援・対応例を解説 まとめ

この記事では「ヤングケアラー問題の実態とは!教師ができることの支援・対応例を解説」をテーマにまとめました。

国では4つの支援策を打ち出しています。

  1. 早期支援(ヤングケアラ―問題の周知、実態調査の推進等)
  2. 相談支援(スクールカウンセラーの配置、オンラインでの相談受付等)
  3. 家事育児支援
  4. 介護サービスの提供

ヤングケアラー問題は国をあげての対策が必要です。

しかし、一番身近にいつのは学校の先生方であり、学級担任です。是非、先生方の温かな目かつ「プロの目」で子どもたちの真の姿を見抜き、寄り添ってほしいと願っています。

先生方が教育の最前線なのです。

「ワダチブログ」では、先生方や親御さんを応援する記事をたくさん掲載しています。参考にしていただければありがたいです。これからもよろしくお願いします。