毎月の「学校だより」に書かれる内容は「校長」の大切にしている考え方の「公式発信」です。
そのネタは、1年間を通して相互に関連し合って学校の進むべき道を照らすメッセージとして続けたいものです。
この記事は「中学校学校だより」の実際の文例をご紹介しています。巻頭言のネタや配慮事項、学校だよりの「書き方と考え方」についてをまとめました。
4月、5月、6月、7月の実際を例示しています。
校長の書く「学校だより」の言葉は、四季の移ろいのなかで「学校の大切にする理想の価値観」の発信であり、系統的につながっていることがカギとなります。
私は公立中学校元校長です。これまでの経験を伝えたいと子育て中の親御さんと先生方にむけて「ワダチブログ」を開設しています。
日頃の激務の中、現職の校長先生方のお力になりたく、学校だよりについてまとめた記事です。参考にしていただけましたら光栄です。
学校だより中学校文例!巻頭言のネタ配慮事項は?書き方と考え方を解説
1.学校だより巻頭言は「誰を意識」して書くのか?
「学校だより」は、そもそも誰に発信しているのか?意見は分かれるかもしれません。
私は、「保護者と地域に向けて」の発信を第一と考えました。
- 「生徒の命を預かり教育活動の責任を負っている立場」として、学校の考え方・意志を保護者に伝えるねらいを意識しています。
- 「公立中学校」として、地域の中で相互の協力関係を築き、豊かな教育活動の下支えをしていただく地域の方々に、“学校を私事として理解していただきたい”という願いから地域の方々に向けて発信していることを意識しています。
「教師と生徒に伝える」を第二としました。第二と言いましたが‥‥
実は、学校だよりの内容は「生徒の自立への道筋としての生き方・考え方についてのネタが中心」なのです。
紙面のネタは、生徒に全校朝会等で一度話した話題も多く取り上げています。生徒が読んで理解できるようになっています。それでも伝えたい一番が保護者と地域を意識している理由は、
「学校は、生徒にこのような力をつけるように努力している」という具体例を挙げ学校教育の方向性を示し
「なるほど」と納得と共感の下、本校の学校教育への支持をうけることが信頼の基盤 となると考えているからです。
「地域とともに歩む学校づくり」推進の一方策に「学校だよりのネタ」で勝負したいのです。
一方、教職員は、学校の責任者の言葉ですので、読んで共通の理解を深める役割として「学校だより」を位置づけています。
校長が「何を考え、何を保護者と地域に発信しているか」を学校だよりで、教職員に理解していただきたい。さらに、配布時に「先生の言葉を介して」生徒に伝えてほしいと指導しています。
生徒へは、「毎月の朝会講話、式辞、様々な挨拶」の系統性を意識しました。さらに、直接文字で伝えたい時は「生徒向けの校長だより」を年間6号程度発行していました。
地域と保護者の顔を思い浮かべ、「伝えたいこと」を「継続して」伝え続ける意識を強く持って執筆する
2.学校だよりの中学校巻頭言の内容は?発信の核に据える価値観とは
学校だより巻頭言の内容には、次の4項目が中心です。
- 教育目標や目指す学校像や目指す生徒像の内容を伝える
- 学校の教育方針や生徒指導面の大切にしていることを伝える
- 生徒の活動活躍、学習指導の取り組み、教育活動の生徒の成長・変容の様子を伝える
- 学校応援団等の地域の協力関係の様子を伝える
背景にはキャリア教育の視点は意識していました。生徒の成長を長い時間軸の成長の中で見出していく姿勢です。
生徒自身にも「なりたい自分」にむけて「よき考え方、よき自身のあり方」について「たくましく豊かに自立する大人に必要な価値観」として伝えています。
3.学校だより書き方の配慮事項
- A4で文字ポイントは12です。表面写真1枚、読みやすさを考慮します。裏面にも写真を必ず掲載しています。
- 巻頭言のA4表を校長、裏面を教頭が分担します。
- 裏面は季節ごとの教育活動での生徒の活躍や地域の方の協力していただいた内容を紹介しています。定例の月行事の掲載です。
- 書く時期は、発行日の二週間前までは書き始めています。1週間ほど寝かしておきます。それは「自分の想いが強い分、偏りや思い込みが強くなり不自然な表現になりやすいため、冷却時間」の意味合いです。その後推敲を重ね、信頼できる方に先に読んでいただき、表現と誤字の最終チェックを済ませ、発行日の直前2日前に完成です。
- 発行は全保護者、学区内地域への全戸回覧形式で行っています。
- 校内HPでの掲載。写真は顔の判別ができないもの、HPでの公開では名前等は公表していません。
中学校学校だより文例!巻頭言4月5月6月7月の実際
1.4月の学校だより中学校文例
冒頭は、1:新入学生徒を迎え、今年度が無事にスタートしたこと。2:日頃より地域の方のたくさんの支援をいただいていること。地域とともに歩む○○学校への一層の支援のよびかけの2点。新任転任の1年目には自己紹介文冒頭にのせます。
○○中学校の○年目の春です。〇名の新入生を迎え、学級数〇学級、生徒数〇名で○○年度をスタートしました。校門を入ると目の前に、本校自慢の○○が広がります。美しい花々が目に飛び込んできます。
この美しい花壇は、子供達と共に活動していただいている地域ボランティア「〇〇会」の皆様に支えられています。その他にも子育て支援グループのご協力で開催した親子の絆学習をはじめ、総合的な学習の時間には、○○や○○にご指導いただき‥‥と多彩で、豊かな体験を子ども達は各自で選択して学んでいます。(‥‥‥‥実例を挙げています)
本校は「地域とともに歩む学校」として歴史を積み上げて参りました。これまでの伝統に恥ない○○中となるよう教職員一丸となり取り組んで参ります。皆様のご理解とご協力をよろしくお願い致します。
目指す学校像や基本的な考え方をお知らせ理解を求めます。学校づくりのキーワードとして、今後伝え続ける言葉を掲げていきます。
- 〇〇中学校は「△と△」を学校づくりの柱としています。その考え方は、皆様との絆を一層深め、子どもたちだけでなく、保護者も教職員も成長し、地域の絆づくりに貢献できる学校でありたいと願っています。
- 学校とは「安心・安全のもとで、ともに出会い、学び、感動し、成長する場であり、誰もが行きたいと思える楽しい場」でなければならないと考えています。
- そして、人は誰でも豊かにして無限なる可能性を持ち、よりよく変われる、成長できるという基本的な考え方のもと、「生徒一人ひとりの‘よさ’を見つけ、認め、伸ばす教育」の実現を目指し、笑顔あふれる〇〇中学校になれるよう努力して参ります。
- さらに、生徒が自分の学校に誇りを持ち、主体的に学校創りに参加する自治活動を尊重し、保護者、地域の皆様と共に‘みんな’の力を結集して、理想の学校を目指して参ります。
- たくさんの「笑顔」があふれる学校に向けて、〇年目を力強く踏み出したいと思います。〇〇中学校に、ぜひご支援・ご協力をよろしくお願い致します。
太字は紙面では使用していません。太字が「学校側が意図的に発信したいキーワード」です。年間を通して繋いでいく言葉になっています。限られた紙面上、羅列している感はいなめません。
2.5月の学校だより中学校文例
吹き抜ける風が心地よく爽やかな季節となりました。1年生は緊張の4月を過ごし、部活動が始まりました。中学校の生活リズムに随分と慣れてきた頃かと思います。
学校では〇月〇日の運動会に向けて取り組んで参ります。〇月〇日には学校総合体育大会も始まります。一気にアクセル全開の季節がやってきます。
〇〇中学校では、4月〇日から1週間、「授業コンクール」を全学級で実しました。この取り組みは、授業後に各教科の先生から授業について‘良かった点や課題’のコメントをもらいます。それを参考にしながら、生徒達が授業に臨む「態度や心構え」を見直し、他の学級と競い合いながら、「学び合う学級」を目指していくことを目的とする取組です。
大変うれしく感じることは、この企画は生徒会から「授業をしっかりとやっていこう1」という意見から始まったということです。自分たちの学校生活について、自分たちで課題を考え、その改善に向けて行動をおこしたのです。この自治の力を大切にして伸ばしていきます。
この取組で思い出した言葉が「切磋琢磨」です。この言葉には、仲間と共に互いに励まし合って共に向上するという意味があります。
私たちは、よく自分を「人と比べて」みることがあります。自分より「できる」「できない」とか、自分より「強い」「弱い」等です。世の中には競争があふれています。
しかし、「切磋琢磨」は、単に競争するという意味とは違います。仲間の成長を思い、仲間と一緒に努力して、自分も仲間と共に成長していこうという心です。美しい言葉です。「切磋琢磨」の雰囲気が各学級から学校全体に広がることを期待しています。
保護者の皆様、地域の皆様のご支援ご協力のもと、4月当初の様々な行事を進めてまいりました。心より感謝申し上げます。生徒達は、新しいクラスに慣れてきたところです。
さて、この「切磋琢磨」ですが、切磋は象牙などを切り出し削ることで、琢磨は玉や石を打ち叩き磨くこと。切磋は整形、琢磨は仕上げの磨くこと。中国の古典には「切するが如く磋するが如しとは学を云うなり、琢するが如く磨するが如しとは自ら修むるなり」とあります。学ぶだけでは表面的であり、それを自らに修めてこそ、人の修養がなることを説いています。切磋琢磨には「自分を自分で磨き上げる」意味も含んでいるようです。
私は「磨」の言葉から、人の成長には「自分と向き合う力」を育むことが欠かせないのではないかと考えています。生徒たちには、自分のよい面も欠点や課題も受け入れて、よりよい生活に向けて考えさせていきます。そのためにも、生徒一人ひとりの「よさ」を見つけ、認め、伸ばす教育を進めてまいります。
3.6月の学校だより中学校文例
学校だより中学校文例!巻頭言のネタと配慮事項は?書き方と考え方を解説まとめ
今回は「学校だより中学校文例!巻頭言のネタと配慮事項は?書き方と考え方を解説 まとめ」について記事にしました。
毎月書くのは意外と大変なことですが、一連の関連性・系統性を意識して学校経営上のキーワードを意識するとネタがまとまりやすくなります。
その後は、季節の学校行事等に絡めて書いていきます。色々な人の声に耳を傾けながら一工夫を重ね校長としての自分らしい学校だよりにいていただければと願っております。
ささやかな実践の一部をご紹介させていただきました。参考になればうれしく思います。
先生方を応援するワダチブログには「中学生の生き方授業」や「親御さんの子育てを応援する」カテゴリー等もあります。先生方の研修やご指導に活用していただけたらありがたいです。