「生徒指導の3機能」ってご存じですか?
この記事は、学級経営や生徒指導に自信が持てない先生方に向けて、「生徒指導の基本的な知識理解と具体的な実践例」を紹介していきます。
生徒指導の基本中の基本ですので
という先生に参考になると思います。また、
このような経験を重ねた先生方にも是非読んでいただきたく「生徒指導3機能」を意識した生徒指導の具体的なコツをご紹介しています。
私は、公立中学校の元校長です。これまでの経験を活かして先生方や子育て中の親御さんを応援する「ワダチブログ」を運営しています。
この記事では、「生徒指導三機能とは何か?」について生徒指導の基本をしっかりと理解できます。生徒指導3機能を生かした日常の教育活動をご紹介しますので、参考にしていただけたら幸いです。
目次「生徒指導の3機能の具体例とは!学級経営の具体的な実践例」では6つの視点を具体的に挙げています。学級づくりの参考になると信じています。
生徒指導の3機能の具体例とは!「生徒指導の基本を軽視しない」
先生方は、新任の先生に“生徒指導のポイントって、一言で言うと何ですか?”と聞かれたら、どのようにお答えになりますか?
「生徒指導とは、〇〇です」と簡潔に答えられる人は、少ないように感じます。
学校現場では一般的には、「生徒指導」とは、直訳すれば「先生」が「生徒」を「指導」することでしょうか。
生徒指導といえば、生徒の課題について、教師がしっかりと指導して、反省を促し行動面を改めさせてことが思い浮かびます。
この理解は間違いではありませんが、実践重視の学校現場で生徒指導の知識面はあまり意識されていません。
実際に生徒は活動して動き回って生活しているのですから、その生活を安全に豊かに充実させるには教師もまた実践あるのみです。
たくさん知識を知っていても、生徒と向き合えない先生では信頼させないし一人前にはなれませんから。
しかし、
実践重視の先生方の落とし穴は、あまりにも知識面を軽視し、自分の経験のみが正解という意識になりがちなところです。
そこで、しっかりと“生徒指導とは何か”を押さえていきましょう。
生徒指導の3機能の具体例とは!「生徒指導とは何?」基本中の基本
「生徒指導」とは何か、文部科学省のことばで解説します。
「生徒指導とは、一人一人の児童生徒の人格を尊重し、個性の伸長を図りながら社会的資質や行動力を高めることを目指して行われる教育活動のことです。
…略…
児童生徒自ら現在及び将来における自己実現を図っていくための自己指導能力の育成を目指すという生徒指導の積極的な意義を踏まえ、学校教育活動全体を通じ、その一層の充実を図っていくことが必要です。
引用『生徒指導提要』
生徒指導を簡潔に表現すると
- 生徒一人一人の人格を尊重しながら生徒指導を進めること
- 個性の伸長、社会的資質と行動力を高めるねらいがあること
- 現在・将来に向けた自己実現に向けての取り組み
- 上記①~③を目指す「生徒指導」を学校教育全体で進めていくこと
そして、究極の一言で表現すると
生徒指導とは、児童生徒一人ひとりに「自己指導能力」を育成すること
になります。
教師は、子どもに自己指導能力を身につけさせるために、生徒指導を行っているのです。これが教師が目指す基本的な方向性です。
自己指導能力とは何か?正確な理解で力量アップ
それでは「自己指導能力」とは、何かについ解説します。
自己指導能力とは、「その時、その場でどのような行動が適切であるか自分で考えて、決めて、実行する能力」と表現できます。
つまり適切な行動ができる力を身につけることです。
それでは「適切な行動」とは何か、
私は二つで表現します。
- 「自分らしい生き方、自分の幸せ(喜び)につながる行動 = 自己実現」です。
- 自分の喜びが自分の周りの方々にも喜びとして分かち合えるような「適切な行動」が求められているわけです。
将来、コミュニケーション能力に長けて、周囲との望ましい人間関係が築ける能力が必要ですよね。従って、自分勝手な自己実現ではいけません。
生徒指導の3機能とは何か? 基本中の基本
自己指導能力の育みに大切にされるののが「生徒指導の3機能」になるわけです。
つまり、「自己指導能力を育むためにも生徒指導の三機能を活用してください」ということです。さっそく3機能を解説していきます。
生徒指導三機能とは
- 自己存在感を与える
- 共感的な人間関係を形成する
- 自己決定の場を与える
この三つを機能に留意して、日常の生徒指導を進めていきましょう。
三つの言葉を暗記しても仕方がないので、日常の生徒指導の場面に当てはめて解説していきます。
生徒指導の3機能を生かした学級経営の大切なこと!具体的な実践例
設定場面
4月新しく学級委員が選ばれました。「学年集会」で各クラスから選ばれた学級委員から「抱負や目標」の言葉を生徒の前で「発表」させたいと考えました。
1:学年生徒の前で発表場面の機会(活躍の機会の場の設定)をつくることは、生徒指導三機能の「自己存在感を与える」に繋がっています。
一人ひとりの生徒に関心を寄せ、生徒の良さに注目し学校生活の中に「活躍の機会を創意工夫」してつくり「成功体験をつませる」、活動後はタイミングよく「努力を認め、励ましの言葉」をかける。
こんな指導手法の基本を通して「自己存在感を育む教育活動」を大切になさってください。
学年集会で学級委員から発表させる機会は、多くの学校で実践されています。
この視点を、発表させることが目的ではなく、「堂々と発表させること」で、生徒が自分自身の存在感をつかみ自信をつかむことに視点を置き指導を進めます。
つまり、この取り組みは何が目的か?常に問い、生徒指導3機能で考えるクセをつける!これで生徒指導の力量はアップします。なぜなら、単なる経験の積み重ねでなく、基本を押さえての思考ができているからです。
2:学年生徒の前で、立派に「発表」することは経験がない生徒には「緊張する場面で不安」に思うものです。
そのような「せっかくの機会、挑戦してやってみたい」「でも、自信ない…うまくしゃべれるだろうか…」こんな心境ではないでしょうか。そんな心境に共感的な人間関係を先生がリードするのです。
先生自身が共感的な態度で接するのです。不安な生徒は「共感される」体験をします。さらに続けます。
「どんな事を話そうとしている。どんなこと言いたいかな」と発表内容を確認していきます。
私の場合、人前で話すことが不慣れな場合は、
これが自己決定の場面です。
生徒が自分で決めるのです。こんな感じで共感的な理解や自己決定の場面を意図的に作って、積極的な生徒指導を推進していきます。
日常の教育活動を「自己存在感を与える」「共感的な人間関係を形成する」「自己決定の場を与える」の3つの場面で考えるクセをつけると、生徒指導の王道である自己指導能力の育みを意識した取り組みとなり教育効果も大きくなります。
生徒指導3機能の「自己決定の場を与える」の進め方と留意事項
生徒に「自己決定の場面を与える」ことの重要性について述べてきました。ここで留意すべき点を挙げます。
例えば「幼い子供が、机の上に登ってしまいました。」この状況で
普通お母さんは
となりますよね。
これを「自己決定の場を与える」を意識した対応にするとこうなります。
これで育児が自己決定型になります。
「自分で降りる!」とお子さんが言ったら、しっかりと降りるのを見守って、降りられたら
「自分で降りられたね。よしよし、○○高いところは危ないよ。これからはしないようにしようね」これでOK!
指導者は先生(お母さん)です。
選択Aと選択Bは、どちらを選んでも「先生(お母さん)が認められるもの」でなくてはなりません。そのうえでの生徒の自己決定です。
幼いこの子の事例でいえば、好き勝手に「どうしたいの?自分で決めなさい」といっていません。なぜなら、「僕、ここにいることは危険だから認められません」
中学生に何でも自分たちで決めなさいは「指導ではありません」この点を留意して進めてください。
生徒指導の3機能の具体例とは!学級経営の具体的な実践例
1.日常の教育活動を「3機能の言葉」を通して「考えて実践する」
先生からの「個別に生徒に声をかけていく何気ない日常の教育活動」でも、生徒指導三機能を意識するだけで、一層効果抜群になりますよ。
「〇〇、どうした?元気ないな」…名前をしっかりと呼んで、声をかけていくことは(自己存在感を与える)ことにつながりますし、
何気ない会話の中に先生から「それは大変だなあ」と言葉をかければ、それは(共感的人間関係)の育成につながるし、
「解決にはAもあるしBもあるよね。どっちがうまくいくかちょっと考えてみてごらん」なら(自己決定)の場面にもなります。
こんな感じで生徒との何気ない会話を「生徒指導3機能の言葉」を意識して考えていると、自然とメッセージが伝わりやすくなります。いつも教育活動を「この3語」で自然と考えられたら何をすべきかが見えてくると思います。
2.学級担任は生徒から「見られている自分」を意識する
学級経営で大事なことは「先生は生徒のモデル」的存在です。
「自分自身が生徒から見られている存在だということ」そしてそれは「いい影響も悪い影響も与えている」こと、自分自身が感じている以上に子どもたちに影響力のある存在だということを先生は自覚してほしいです。
日頃先生が「何を大切なこと」と繰り返してい言っているか?
生徒は、先生をよく見ています。感性で見ています。例えば、先生の話の内容より、先生は今「すごく本気か」どうか等は肌感覚で正確に察知して感じるものです。
こわいくらい本質を見抜きます。侮るなかれ。
3.生徒指導は「新しい価値観」を伝えること
生徒指導は、先生から生徒への一方通行をイメージしていてはいけません。
ただ決まりだから守れ!大切だから守れ!ではいけません。これは、先生から生徒への一方通行の生徒指導です。
「なぜいいのか、なぜだめなのか」理由をきちんと話し、生徒が納得のいくように伝えてください。「伝えて」と書きました。生徒指導とは「〇〇が大切と価値観を伝えること」です。
指導とは「生徒に○○しなさい」と話すことではなく「〇〇することが、こう大切だから、守れるといいね」と生徒が納得できるように「伝える」ことを意識してください。
伝えることが指導の本質なら、生徒に正確に伝わったか確認が必要ですよね。だから生徒に
ここを「生徒も言葉」で確認することが生徒指導です。先生が「大切だよ」と話すことだけでなく、「生徒の声に耳を傾け真剣に聞くこと」が「生徒指導」なのです。
伝える生徒指導を進めると、教師と生徒間に共感的人間関係が育ちます。
4.「あたたかな言葉」を重視する学級経営
言葉は学級内を“こだま”します。
生徒には「バカ死ね、うざい、ムカつく等」の刺々しい言葉を気を付けるよう考えさせてください。
逆に「ありがとう」の感謝の言葉を中心に、温かな言葉を広げてください。
まずは先生が「しっかり、丁寧に言葉を使うこと」は、温かな望ましい人間関係と共感的関係をはぐくむ土壌を築きます。
5.学級経営の中核は「違いが”変”ではなく、互認め合い学び合える関係」
違いが「変」、これは危険な信号です。一人ひとりの「違う」が大前提の価値観。バラと菜の花を比べても意味がありません。どちらも素敵です。違いは変ではなく、認め合える個性です。
伝えたい「価値観」は、「クラス30人の一人ひとりに個性があり、違う良さがあります。一人ひとりの違いを「変」と考えるか、自分との違いを互いに「認め合う」仲間になるかが、楽しい学級にする分かれ目です。
個性が集まる学級集団で「違いが変」の価値観から、共感的な人兼関係の育みや、自己存在感を感じるクラスはできません。
6.「私やります!」活躍の機会を工夫して
「中学生は“自分から”行動する」ことできるかどうか、これが成長へのカギとなります。
授業、部活、委員会、係活動、家庭学習、何でもイヤイヤやるのか、目標もって積極的にやるのか、この違いでその後の成長ぐらいは大きな差となってあらわれます。
「私やります!」の言葉を大事にして、自己決定が大切なことに気づかせてください。
「清掃をさぼらず黙々とやっている」「自習時間静かに集中してできる」は基本的生活として重要項目ですが、見方を変えて意識すれば、日常生活のすべてが「自分の行動を決める」「自己決定の場」になります。
生徒指導の3機能の具体例とは!学級経営に活かす6つの実践例で力量アップ まとめ
今回は「生徒指導の3機能の具体例とは!学級経営に活かす6つの実践例で力量アップ」としてまとめてみました。
生徒指導の自己指導能力を育むこと、三機能を日頃より「意識」して教育活動を考えることができると、一気に生徒指導の力量はアップしているはずです。
自分自身が、「何が大切で、何を目指しているか」が理解できるからです。なんとなく経験でしている教育活動とは全く違うはずです。
これからも「ワダチブログ」でいろいろな情報をお届けしていきます。よろしくお願いいたします。