山本五十六(やまもといそろく)氏といえば、太平洋戦争時のアメリカとの開戦に“勝てる見込みがない”と最後まで反対していた人物であり、当時の海軍最高指揮官といわれています。その人柄は、誰もが尊敬の念を抱く人物だったと言われています。
その山本五十六氏には、人材育成に関する名言があります。
やって見せ、言って聞かせて、させてみせ
ほめてやらねば、人は動かじ。
実は、この名言には、続きがあることご存じでしたか?このような言葉です。
話し合い、耳を傾け承認し
任せてやらねば 人は育たず
やっている 姿を感謝で見守って
信頼せねば 人は実らず
この記事では、山本五十六氏の「人材育成の本質を突く名言」から学ぶ「教育論・子育て論」についてまとめました。
小中学校の管理職や学級担任の先生方や子育て中の親御さんに向けて参考になる考え方や手法をまとめた記事です。
- お子さんの子育ての際、その基本的な関わり方や基本姿勢がわかります。
- 先生方には学級づくりの生徒指導のヒントになります。
- 管理職の先生方のは人材を育成するリーダーシップのヒントになります。
私は公立中学校の元校長です。40年の経験を伝えることで先生方と親御さんを応援する「ワダチブログ」を運営しています。お役に立てれば幸いです。
山本五十六の名言「やってみせ」から学ぶ人材育成の考え方
親や先生は、よきモデルとして影響力を与えることができる
私は人材育成とは、別の言い方をすれば「“よき”影響力を与える」「育つ力を引き出す」ことと考えています。
子育て論の一つ目は、親や教師が「やってみせること」によって、自分自身が子どもに対し「よきモデル」となることを意識してほしいと考えています。
子どもは「新しく、学ぶことが仕事」です。
子どもが意欲的に行動を起こし、よき経験に結び付けるためには、未知のことへの「不安を軽減」させたり、求められていることへの「見通し」をもたせたりすることが効果的です。
とお手本を見せることです。
(もちろん、親や先生は何も言わず考えさせ、失敗から学ばせる手法もあります。正解は一つではありません。)
身近な大人が、ちゃんと「やって見せる」ことで、子どもたちはチャレンジへの「不安が軽減」され「よし、やってみよう!」という「前向きなエネルギ―」にきっと変わります。
そのような環境の子どもは、成功体験を重ねていくことでしょう。
二つ目の考え方は
親や教師は、自分自身が「子どもから見られている存在」だということを自覚することです。
お子さんは鋭い感性で大人を見ています。見て感じているのです。
つまり、自然とよき影響を与える場合もあれば、悪影響も与えているかもしれません。親も教師も、口ではなく背中で教育している側面を大切にしたいものです。
「やってみせ」の姿勢には、「子どもの可能性を信じる」大人の謙虚さも含まれていると思います。
山本五十六「言って聞かせて」の人材育成論を子育てに活かす考え方
今と将来を丁寧につなぐ言葉を大切にする
「言って聞かせて」の意味は
子どもに「何か責任をもって、やり遂げることで成長してほしい」と願うとき、してほしい内容の指示だけでは、子どもは育たないということを意味します。
大切な考え方は視点は次の通りです。
つまり、子供に「やることの意味」「将来」を繋げてあげることでしっかりと「やる目的をつかむこと」ができます。
その行動がどのように大切なのか、どのような意味があるのか。
子どもを育てるには「今」と「将来」をつなぐ言葉を意識して「具体的に伝えること」が重要です。
山本五十六「させてみて」の人材育成論を子育てに活かす考え方
活躍のチャンスを与える・自己決定の場面の大切さ
「させてみて」とは、親や教師が子どもたちに「活躍のチャンスを与える」ことです。
意図的に計画的に、活躍の機会が子どもの成長を加速させます。
また、「させてみて」の前に、自己決定の場面を大切にすると、さらに効果的です。つまり、
小さなことでも、子どもの意思を確認しながら「自分で決める~AとB、どちらがいいのか選択させる」等、自己決定の機会をつくってチャレンジさせてみてください。
自信とは、親や先生が子供に向かって“自信をもて!”と叱咤激励しても育まれるものでもありませんよね。
子ども自身が努力をして行動することを通し、よき経験を重ねる過程が大切です。適切な成功体験です。子どものレベルにあった挑戦内容を意図的に経験させてください。
レベルが低すぎても、高すぎてもマンネリや自信喪失になってしまうかもしれません。
レベルの高いものならスモールステップを踏ませたり、適切なチャレンジ内容を2つ用意して、子ども本人に決めさせたりするもの効果的です。
山本五十六「ほめてやらねば」の人材育成論を子育てに活かす考え方
タイミングよい言葉かけで承認欲求に応える
ここでは、ほめるという言葉より、「認める(承認欲求を満たす)」という言葉のほうがぴったりです。子どもの努力やチャレンジ過程を認めることが大事になります。
そもそも「ほめること」は人材育成に欠かせないポイントには違いないのですが、その本質は難しいものです。
例えば、人間関係が悪い相手からほめられても心が動きません。
ほめるとは、相手を“敬の心”でしっかりと認めることです。
認める行為を最大限生かすには「タイミング」も大切になります。適切なタイミングで「認める」言葉かけができるには、生徒、わが子に常に「関心を寄せて」いるからできるのです。
関心を寄せるとは、子どもを親身になって理解しようとする愛情の発露ともいえる自然な心理です。
- 目をかけて
- 声をかけて
- 言葉をかけて
- 心をかけて
子どもを、幼いからと侮るなかれ!まだ、未熟です。ダメなことなダメとしっかりと叱ることは子育てには欠かせません。しかし、子どもにもしっかりと向き合う心がないと、すべてが絵に描いた餅になってしまいます。
山本五十六「人は動かじ」の人材育成論を子育てに活かす考え方
人の成長に欠かせないのが、動くということ=主体性・エネルギーと考えます。ここでの動くとは、前向きな心を獲得するという意味です。
人材育成とは、その人が持つ良さを見出し、引き出し自分の足で歩きだすきっかけをコーディネートすることでないでしょうか。
やって見せ、言って聞かせて、させてみせ、ほめて認めることで、人は心身ともに元気なり前へ前へ歩み続けることができるのです。
教育の「育」の字を「育てる」とようだけでなく「育つ」と読む教育観もきっとあります。
「育てる」意識だけでなく、その先に「この子はたくましく、豊かにきっと“育つ”」という教育論を大切にしたいものです。
山本五十六の名言「やってみせ」から学ぶ人材育成の考え方を子育て論に
人は人と関わり合って成長するものです。
「話し合い」「耳を傾け」「承認し」「任せる」に共通する下支えは「信頼」です。
教室内は小さな社会です。なまなましい心のぶつかり合いもあります。そして、教室には30数人が創り出す「その場の空気(雰囲気)」があります。
教室は日々、微妙に変化します。家庭内もまた、同じです。各家庭には独特の人間関係の下、家族内の暗黙の約束があり「その場の空気」をつくっています。
正しい「話し合い」が成立するには「自分の思っていることが、しっかりと口にできる」と「それを、きちんと受け止め聞いてくれる先生がいる(親がいる、仲間がいる)」という安心安全な生活環境になっていなければなりません。
その最初の条件設定が、教師と親が自らよきモデルとなって「子どもの話に耳を傾ける姿勢を示すこと」が基本条件です。
とお子さんが感じてくれるような「聞き方」ができていますか?
チェックの視点は「大人側が、聞いているつもりではだめ」なのです。
人が大きく育つには「身近な大人の信頼」が欠かせません。未熟でできないことも多いことでしょう。反抗ばかりかもしれません。しかし、人から信頼される、頼りにされる、期待されることを経験することで、人は成長し育つのだと考えます。
山本五十六の名言から学ぶ人材育成の考え方を子育て論に まとめ
今回の記事では、山本五十六の名言「やってみせ」から学ぶ人材育成の考え方を子育て論に活かす…をテーマにまとめてみました。
名言を締めくくる言葉が
- 人は…動かじ
- 人は…育たず
- 人は…実らず
山本五十六氏の最後の言葉「やっている 姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず」から、私は「三寸の童を拝す」の言葉を連想しました。
文字通りなら、1メートルにも満たない幼い子どもを「拝む」という意味の言葉です。
子どもには「自分で育つ力がある」のです。そのうちなる力に身近な大人が「敬意」を示しきびしく温かく見守ることでたくましく、豊かな育みにつながるのではないでしょうか。
私の私見ですが参考になれば幸いです。「ワダチブログ」には先生方や親御さんに向けた記事が多数あります。またお読みいただけたら嬉しいです。ありがとうございました。