生徒指導の力量アップには今の思考を転換することが鍵です。教師の仕事は「生徒を指導する」ことではない。ここからスタートします。
常識的には、教師の仕事は「生徒を指導する」ことですよね。では、「指導すること」とは、何をすることでしょうか?
例えば「正しいこと」を、教師が真剣に「〇〇するように」と、子どもを諭すことですか?
そのような「指導する」ことのイメージには、先生から生徒に「一直線の矢印が向けられているイメージ」を私は感じます。
「指導する」という言葉には、教師側からの生徒への一方通行の「働きかけ」になっていないでしょうか?
この現象に、冒頭に「教師の仕事は指導することではない」というフレーズで表現してみました。実は「教師からの指導」で、生徒指導上の諸問題が頻発してしまうことが起こっています。
学校には、こんな残念なケースがよくありませんか?
●●先生に注意されて
うちの子どもが、ひどく傷ついています。
▼▼と言って指導したというのは、本当なのでしょうか?
もし、本当なら先生としてふさわしくない言葉ですよね。
学校でしっかりと事実関係を調べてください。
もし本当なら
子どもに謝ってください。
真剣に指導した結果がこれだと、情けなくなってきますよね。
私も経験があります。
これが、熱意ある教師が真剣に指導した結果です。
なぜ、こんなことが起こってしまうのか、どうすればいいのかについてこの記事で解明します。
生徒指導力アップの鍵を4段階で考える
今までの「指導する」の一般的理解は、
「ダメなことはダメ」と毅然とした態度で「正しいことは、こうだ!」と、熱く注意すること。
これが疑うことのない教師の指導の王道とされてきました。だから、上記のような対処に精力を掛けなければならなくなることもおこります。
そこで。
もう少し「指導する」を、丁寧に書き直せば、このレベルの保護者対応は激減します。
大きな指導の流れはこうです。
1段階
指導とは、教師側から生徒に教えたい「大切なこと」を、伝えることです。
つまり、指導するとは
「先生の想いが生徒に伝わったかどうか」がポイントになります。
「私はしっかりと指導しました」とは、
その結果「生徒はしっかりと受け止めました。私の伝えたい指導内容(価値)を理解できました。」という状態のことです。
2段階
指導するとは、伝えなければならない大切な価値観を生徒に届くように、
伝える工夫をすることです。
だから、(指導後は必ず)生徒に届いたかどうかを、確認しなければなりません。
3段階
「先生は、こんなことが大切にしてほしいから、今、ダメなことはダメと、ハッキリと君に話しました。君はどう考えましか?先生の想いは伝わりましたか?」と
確認しなければ、目の前の生徒に届いたかどうかわかりませんよね。
つまり指導するとは生徒から「(指導を受けて今、どう考えているか)聞くこと」です。
伝えることと聞くことはセットです。
4段階
生徒の言葉の調子、表情、態度、言葉の内容等、反応の様子で、自身の指導への自己評価ができます。
不十分で伝わらなければ、その場で指導を微調整をして修正する。
指導を、熱く真剣に注意することと理解してしますと、どうしても教師側からの話しっぱなしになります。
生徒への問いかけは
「なぜ、そうしたんだ!」
「どうして、…」
詰問になってしまいます。
一歩通行の指導では、教師だけが指導した気になっている状態です。
生徒指導力アップの鍵、心の問題には厳しい教師気質に気づく
教室内には、様々な学力の子どもたちがいます。同じテストをしても100点満点を連発するような生徒もいれば、20から30点に届かない生徒もいます。
この差を子どもたちの実態として「授業をどのように進めたら、理解できるだろう」と、教師が一番配慮する視点ですよね。
そして、理想は全員ができるように頑張るわけですが、全員が同じ学力になることはありません。一度の指導で全員が、100点にはならないわけです。
もう勘のいい方は、私が何を言いたいのかわかったことでしょう。
そう、先生方はなぜか「心の問題や行動面の問題」には、全員ができると信じているのです。
熱く「これが大切なことだ!」と、「指導」すれば、「すぐ」「全員が」「必ず理解できる」と思い込んでいる節があります。
学力の現状には寛容です。
100点ではなくても、「こんなに伸びたじゃないか。凄い。よく努力したね。」と肯定的に評価します。
それなのに、心情面や行動面には
「なんで、この間言ったことができないの!自覚がない!やろうとする意欲がない!意識が低い!できるはずなのに、なぜ怠けるの!自分に甘くない?」等、
できることを前提に、完璧を求めていませんか?
その背景は、
教師は本当に、真面目で純粋で本気で
「子どものために」と、向き合って指導している方々の集団なのですよね。
だから、私が本気で注意すれば「伝わる」と信じて全力で指導するわけです。
そして、ほとんどの生徒がそれを理解するのも事実。
だから、きちんと「できる」多くの生徒がいるのも事実。
だから、自分の指導力・指導法を疑うことがないのです。
どの生徒にも同じようなアプローチをして、同じ結果を求めている。
学力の差の実態のように、生徒一人ひとり「育ち方や家庭環境、資質能力」に個性があるにもかかわらず、
なぜか「すぐできる派」を基準にして考えるので惑わされてしまっています。
できないことが、本人の怠け、本人の意識の低さ、本人の欠点として大きくクローズアップされるのです。
私の本意は、一つの見方の提供です。
考えるもとです。実は、この考え方が100%正しいと主張する気もありません。ちょっと断定的に表現しているのは、意図的です。
だって、「納得」「拒絶」どちら側にも反応しやすいでしょ。私は「教師の思考転換」に向けての話題提供しているのです。
ちょこっとこんな視点から自己理解を進めると、先生方の生徒の見方に、新しい視点が加わり「余裕が生まれる」のではないでしょうか。
それを期待して、考える素の提供です。
次に、上記の表現「生徒の見方に余裕」の「余裕」ついてお話します。
生徒指導力アップの鍵、信頼される教師像
ユーモアがあって遊ぶ心がある先生
生徒は大好きです。このタイプの先生は、笑顔が素敵で明るい表情が特長です。そして、余裕があります。
余裕の反対側は、
いつもピリピリ顔、忙しそうで疲れてる、表情が乏しい、臨機応変がなくいつもすべきことで、ワンパターン。情緒不安定型でその日の気分が態度にでてしまう。朝一番の表情に差が大きい。
そして、最大の課題が自分の現状に自覚がないこと。
ここでの意図は、そんな先生がいて困るという話ではありません。
先生方はみんな一生懸命です。これが大前提。ただし、教師の世界は「露骨に注意し合う職場文化ではない」ので、つい教師側からの感覚がはびこります。
この記事で、ちょっと考え方を変えて、別視点を加えて意識するだけで、先生方はすぐに改善できると考えています。
余裕とは、生徒の問題に「答え」を急ぐ先生ではない。
生徒がすぐ変わることを「自分の指導力」とは考えていない先生です。
だから、あたたかな「まなざし」で待てる余裕があるのだと思います。
時には生徒の問題に途方に暮れたり、敗北感に打ちのめされたり、正直逃げたくなることもあったりします。
けど立ち去ることなく子どものそばに立ち続ける先生。そういう選択を選べる先生。
私の信頼される先生のイメージは、カッコよくはないし、自信満々な先生でもありません。
一言で簡潔に表現するなら、「どの生徒にも、成長する力がある」と信じ、生徒を信頼する先生です。
平易な言葉で生徒指導観の再構築
生徒指導力アップの鍵を3つにまとめます。
1つめのポイント
生徒指導とは、生徒が納得できるように「伝えること」、つまり「大切にしてほしい価値観」を語ってほしい。
指導したい内容な、生徒に気づかせたいない価値観。常に、生徒に自分の想いが「伝わっているか」を意識してほしい。
2つ目のポイント
生徒指導とは、生徒の話を真剣に「聴くこと」、つまり生徒にも「今の気持ち、考えはどう?」と「語らせること」です。
これをしないと、教師の一方的な「指導したつもり」「言いっぱなし」になります。
3つ目のポイント
生徒指導とは、先生の愛情、本気、真剣さを「表現すること」です。
話す内容、言葉は大切に違いない。しかし、先生の表情、態度、声の調子、姿勢等のすべてが生徒に大きな影響を与えています。
「誰に」「どんな言われ方」をされたか、この要素が、言葉以上に伝わり方の成否を決めます。
今日は、ここまです。ありがとうございました。