「針金の母」の実験と詩『明日』、そしてONE OK ROCK。ボーカルTakaさんの歌詞に、子育ての真実がつまっています。
子どもは、もとから「育つ」力がそなわっている。だから「子どもの育つ力をてつだう」…肩の力を抜いて、このぐらいの、ゆるーい考え方では、どうでしょうか?
子どもを「きちんと」育てなければと頑張れば、頑張るほど空回りしてしまう感覚、本当に苦しいものです。その原因は、教育の「育」の字を「育てる、育てなければならない」と読んでいるからです。
「針金の母親」の実験に、母親のやらなければならない、たった一つの使命がわかります。
子育ての原点を考える~「針金の母」のお話
愛犬家としては、怖い話というより、あまりにも動物の命を残酷に扱い過ぎて、気分が悪くなり怒りすら感じてしまう実験でした…しかし、「子育て」の原点が証明されています。
先人の研究成果を「私たちが、どう読み解き今に生かすか」がカギです。不愉快に感じますが、価値ある研究にしなければとの思いを込めて、ご紹介します。
ハーロー博士のサルを使った実験です。
生後間もない子ザルを、母親から引き離しました。
そして、「針金がむき出しの模型」と「柔らかな布等に巻かれた模型」の二つを(本物の母親の代わりとして)作ったそうです。「針金がむき出している模型」の方だけに「哺乳瓶=エサ」を取り付けました。
当時の常識は、親の第一の役割は「食事」と理解されていたそうです。
それを重視すれば、子ザルは「針金がむき出しの模型」を母親として、認知するのではないかという予測がありました。
この実験結果は、想像つきますよね。
結果は
子ザルは一人では生きていけないので、食事をするときだけ「針金がむきだしの模型」から哺乳瓶で乳を取り、
それ以外の時間は「柔らかな布を巻かれた模型」にスキンシップを求めていたそうです。「針金がむき出しの模型」には、見向きもしなかったそうです。
私には「実験しなくてもわかるだろう!」と言いたくなります。当たり前すぎます。
子ザルは、恐怖に遭うと一目散に布の模型にしがみついていたそうです。きっと、布の模型に「安心できる、安全な自分の居場所」と感じたのでしょう。
書き続けるのもつらくなりますが、
より早く母サルから引き離された子ザルは、母親のぬくもりを一切知らないので、布の模型にも近づくことができず、(よりどころが、何一つなく)片隅で、恐怖におびえて震えていたそうです。
実験を生かす子育ての原点は、
安心できる母親の「ぬくもり」、自分を守ってくれる信頼する母親の「そばにいたい」という欲求を満たしてあげることです。
それが、生きる力の原点に思えるのです。みなさんは、どうお感じになりましたか?
この実験以外にも、
本物の母親と一緒に育たないと、子ザルには十分なコミュニケーションがとれず「群れの中に入れないで孤立する」という実験結果も報告されています。
結局、どちら側の子ザルも、「大きく成長することはなく死んでしまった」これが真実です。
生きるには、母親のぬくもりが必要なのです。絶対的な信頼、すべてを任せられる心休まる居場所がいかに大切であるのかがわかります。
いつでも帰えれる、自分を受け入れてくれる母親、心から安心して身をゆだねられる母親がいてくれさえすれば、子どもは、安心して外の世界に踏み出すことができるのでしょう。
わが子の「育つ力」を手伝う子育て ~詩集『一人のために』
今日のテーマは「育」を「育つ」と読むです。こんな詩があります。
「明日」 はきだめに えんどう豆咲き 泥池から 蓮の花が育つ 人皆に 美くしき種子あり 明日何が咲くか
種子には、花になる力がそなわっています。花の色や形は様々です。花には多種多様な種類があります。胡蝶蘭が一番優秀ではありません。菜の花畑、ひまわり畑も素敵です。
子どもには、自分で咲かせる花がもともとあるのです。親の願いで、チューリップの種子がバラにはなりません。どの子どもも、その子らしい似合う花が、きっとあります。
親の役割は、その種子が無事に花を咲かせられるよう、見守ること、手伝うことのように考えます。
土壌を耕し肥料も少々、雨があまりにも少なければ、時には水を与える。日差しがあまりにも強ければ、日陰をつくってやる。成長を「てつだう」感覚ぐらいで十分なのかもしれませんね。
水をやりすぎるのも、肥料やりすぎるのも根っこが腐ります。
大丈夫、種子には育つ力が備わっているのですから。
この記事をお読みのお母さんなら、きっとやりすぎるくらい愛情深いお母さん、お父さんじゃないのかなと思います。育つ力を信じ、少し力を抜いてみませんか?
こどもの そだつ力を てつだう
そこに、母親にしかできない役割、家族にしかできない役割がある
一番大切なことが、味方だよのメッセージ。いつでも帰ってきていいよ。ずっと応援しているよのメッセージ。失敗しても…カッコ悪くても…戻ってきていい場所、いざという時は戻りやすい場所、それさえあれば、子どもたちは外の世界に、自分から踏み出せるのです。
親がわが子の教育を考えるとき、真っ先に浮かぶのは
この子に、「幸せな人生」を送ってほしい。
この一点だけ、ではないでしょうか。だとするならば、「幸せになる力」を身につけさせたいですよね。
しかし、実際は「もっと理想の子育てをしなければならない」との勝手な思い込みで、自分自身を縛り付けて苦しんでいるお母さん、お父さんが多いのではないでしょうか。どうして、欲張っちゃうのかな?
子ども側から見れば、絶対にパーフエクトなお母さんを求めている子どもなんか一人もいないんじゃないかな。
いつも安心していられる、いざというとき戻ってこれる居場所、カッコ悪い自分でも愛してくれる母親と父親。
それだけかもしれない。
一生懸命すぎる子育てをしなくても、温かな食事とともに「親として」ずっとそばにいてあげることが、ものすごいことなのではないでしょうか。
親の願いと子どもの願い ~ワンオクTakaの言葉から
世界で活躍するONE OK ROCK。ボーカルTakaさんの歌う
『Nobody’s Home』
自分自身もわが子にダブって心に染みる歌です。歌というより、心からの叫び!
Takaさんの両親といえば、フアンならだれもが知っている森進一さんと森昌子さん。
あまりにも有名な大物歌手の2世。Takaさん本人にしかわからない、苦悩や葛藤があったと思います。
Takaさんの歌詞です。
そんなふうに言えるのにも時間がかかったね。
いつだって、ここだけは温もりや優しさが僕を包んでくれてた場所で
けど僕は何度も裏切ってきたね I just say 心から I’m sorry 今やっと気づいたよ
Nobody’s home
何もかも捨てて飛び出したあの日 思い出せば 僕の背中をあの時も 強く押してくれてたんだね
気づけばバラバラになってたんだ どうすることもできなくて
ただ悔しくて
求めてた親の夢
欲しかった僕の夢
交わることのなかった現実
けど今言えることがあるの 離れても揺るがないもんはある
たとえ形が崩れてなくなっても 目には見えないもので必ず 僕らは生きる限りつながっているから
本当に迷惑ばかりかけてきたから いつか必ず 超えて必ず
僕の見せたい景色を見せるから
Everybody’s home 心から愛しているよ ありがとう
深い親御さんの愛情を感じつつも、親の願いとは違う生き方を歩もうとする一人の人格をもつTakaさんとご両親の心の苦悩が交錯した名曲です。ご両親をライブに招待したそうです。
とっても、とっても素直に表現された歌詞に、
私は共感とともに心が痛みます。「もっと、わかってあげたかった」
まとめ
1 針金の母親の実験から、
●子ザルは餌を食べる以外、「柔らかな布を巻かれた模型」にスキンシップを求めていた
本物の母親と一緒に育たないと、子ザルには十分なコミュニケーションがとれず、群れの中に入れないで孤立する。結局、どちら側の子ザルも大きく成長することができなかった。
ちなみに、実験動物に対する扱いがあまりにもひどかったため、大きな非難が起こり、アメリカでの動物愛護運動が生まれるきっかけになりました。博士自身もうつ病等の重い病を抱えながら、考えだされた実験だったようです。
●子どもは、安心できる母親の「ぬくもり」を感じたい。自分を守ってくれる信頼できる母親の「そばにいたい」という欲求がある。それが生きるエネルギーを育んでいる。母親にしかできない子育ての原点。
2 教育の「育」の字を、「育てなければならない」等と読んで、せまい固定観念で自分自身を縛り付けない。「育つ」と読んで、自分自身で花を咲かせる力がもともとそなわっていると考える。個性輝く可能性に心を寄せ続ける育て方もある。
3 親の願いは、わが子の「幸せ」。子どもはパーフェクトな母親なんて望んでない。欲しいのは、自分のすべてを包み込んでくれる温かな母親、家族、居場所だけ。
今日も、読んでいただきありがとうございました。